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Column

子どものアトピー性皮膚炎

公開日
更新日
執筆
坂口 平馬
監修
西川 和希 医師

アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気で、乳幼児期に発症することが多い病気です。適切な治療とスキンケアを続けることで、症状のない状態を保つことができます。

赤ちゃん・子どものアトピー性皮膚炎

赤ちゃんには、乳児脂漏性皮膚炎(頭や顔に黄色っぽいかさぶたを伴う赤み)など、一時的な湿疹(いわゆる「乳児湿疹」)がよくみられます。こうした湿疹と乳児期のアトピー性皮膚炎は見分けが難しいことがありますが、かゆみがあるかどうか(抱っこすると頬をこすりつける、服を脱がせると体を掻くなど)が大切なサインになります。一時的に湿疹が引いても再発を繰り返すようであれば、アトピー性皮膚炎の可能性も考えられます。

※いずれの場合も、適切な治療を行うことで、かゆみのコントロールが可能となり、皮膚の健康状態を維持できます。

小児のアトピー性皮膚炎では、気管支喘息や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などの他のアレルギー疾患を併発しているケースが珍しくありません。

こうしたアレルギー疾患は、成長に伴って発症していくこともあり(アレルギーマーチ)、それぞれを包括的に診療していくことが大切です。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、赤みやブツブツ(丘疹)、皮膚の乾燥や剥がれ(落屑)など、かゆみを伴う湿疹が混在し、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚の病気です。

乳幼児期に発症することが多く、小児のおよそ10%(乳幼児健診では約10〜13%)にアトピー性皮膚炎がみられます。成長とともに改善することが多く、ある調査では、半数が8〜9歳ごろまでに、16歳を過ぎると約9割が自然に治まっていたと報告されていますが、一部は成人期まで症状が続きます。

本来の健康な皮膚は、角層と呼ばれる一番外側の部分が外部刺激から体を守り、水分の蒸発を防ぐ役割を果たしています。しかし、アトピー性皮膚炎の方の皮膚では、見た目に正常であってもバリア機能が低下していることがあります。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返します。

アトピー性皮膚炎の湿疹には次のような特徴があります。

  • かゆみを伴う
  • 皮膚に赤みがある
  • 湿っている(ジュクジュクしている)
  • 掻いた部分から液体がにじむ
  • 皮膚がカサカサしてはがれる
  • 長期間続くと皮膚が硬く・分厚くなる
  • 顔や体に左右対称に湿疹が出ることが多い
  • おでこ、目・口・耳周り、首、脇の下、手足の関節の内側などに生じやすい
  • 年齢によって出やすい場所が変わり、乳児期は頭や顔から始まって体や手足に広がり、幼児期以降は首や肘・膝の内側などの関節部に出やすくなります

1歳未満では2か月以上、1歳以上では半年以上、このような症状が続くと「慢性」と診断されます。

アレルギー体質や皮膚のバリア機能が弱い方は発症しやすい傾向があります。

子どものアトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、アレルギーを起こしやすい体質や皮膚のバリア機能の弱さが背景にある「なりやすい体質」に、ホコリやダニのアレルゲン、掻くことによる刺激、汗、化学物質などの様々な環境刺激が加わることで発症します。

ご本人またはご家族が、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息などのアレルギー疾患を抱えているケースも少なくありません。

アトピー性皮膚炎の検査と診断方法

アトピー性皮膚炎は、日本皮膚科学会の診断基準に基づき、①かゆみがある、②特徴的な湿疹が左右対称に、年齢に応じた出やすい場所にみられる、③良くなったり悪くなったりを繰り返し、乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上続いている、の3つを満たす場合に診断します。あせもやかぶれ(接触皮膚炎)、おむつかぶれ、とびひなど、似た症状の病気と見分けることも大切です。

ご本人やご家族のアレルギー疾患などのアレルギー体質(アトピー素因)は診断の参考になりますが、必須ではありません。必要に応じて血液検査を行い、アレルギー体質の目安となる総IgE値や、食物・ダニなどに対する特異的IgE抗体、湿疹の勢いを反映するTARC(ターク)などを調べます。ただし、特異的IgE抗体が陽性でも、その食物などが湿疹の原因とは限りません。また、TARCは2歳以下では高めに出るため、年齢に応じて判断します。

アトピー性皮膚炎の改善・治し方

アトピー性皮膚炎の治療は、「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子の対策」の3つを基本に進められます。目標は、症状がないか、あっても軽く、日常生活に支障がなく、薬もあまり必要としない状態を保つことです。まず塗り薬で炎症とかゆみを速やかに抑え(寛解導入)、その良い状態を維持していきます(寛解維持)。

悪化因子の対策

アトピー性皮膚炎は、汗や唾液、髪の毛や衣類のこすれ、掻くことなどの刺激や、ダニ・ホコリなどのアレルゲンによって悪化することがあるため、それらを避ける工夫が大切です。汗や唾液はシャワーで流すか、濡れた柔らかいガーゼで拭き取り、爪は短く切っておきましょう。なお、食物の除去は、その食物で湿疹が悪くなることが確かめられた場合に、医師の指導のもとで行うものです。アレルギーを起こしやすいという理由だけで食べ物を制限することは勧められていません。

スキンケア

肌の乾燥やかゆみがあると症状の悪化につながるため、保湿剤を用いた丁寧なケアが欠かせません。保湿剤は1日2回(うち1回は入浴直後)、湿疹のない部分も含めて全身にたっぷり塗るのが効果的です。皮膚を清潔に保つためには、38〜40℃くらいのぬるめのお湯で、泡立てた石けんを使って手で優しく洗い、石けんが残らないよう十分にすすぐことが大切です。

薬物療法

炎症やかゆみを抑えるために、ステロイド外用薬がよく用いられます。使用部位や症状、年齢に応じて、ステロイド以外の抗炎症外用薬が選ばれることもあります。薬は十分な量を塗ることが大切で、人差し指の先から第一関節まで出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の面積が目安です。症状が良くなった後も再発を繰り返す場合は、週2回など間隔をあけて塗り続ける「プロアクティブ療法」で良い状態を保ちます。塗り薬を適切に使っても良くならない中等症以上の場合には、年齢に応じて生物学的製剤(注射)などの治療を検討します。

外用薬

外用薬 内容
ステロイド外用薬 炎症を抑える塗り薬の中心となる薬です。使用の際は、症状の程度や年齢、部位に合わせて適切な種類を選び、正しい塗り方を守ることが重要です。治療は長期にわたって行われるため、副作用を防ぐためには医師による専門的知識と経験が不可欠です。
タクロリムス軟膏(プロトピック) ステロイドとは異なる仕組みで炎症を抑える外用薬です。2歳以上から使用でき、顔や首など、ステロイドの長期使用で副作用が出やすい部位によく用いられます。塗り始めにヒリヒリ感やほてりが出ることがありますが、皮膚が良くなると治まることが多いです。
デルゴシチニブ軟膏(コレクチム) JAK阻害薬と呼ばれるタイプの塗り薬です。生後6か月以上から使用できます。
ジファミラスト軟膏(モイゼルト) PDE4阻害薬と呼ばれるタイプの塗り薬です。生後3か月以上から使用できます。
保湿剤 弱った皮膚のバリア機能を補うために使用し、湿疹の再発予防やかゆみの軽減に役立ちます。症状が良くなった後も続けることが大切です。

内服薬

内服薬 内容
抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬) 塗り薬による治療の補助として、かゆみを和らげる目的で使います。飲み薬だけで治療するのではなく、塗り薬と組み合わせて使います。眠気の少ない第2世代の薬が勧められます。また、アトピー性皮膚炎と併発することのある花粉症にも有効です。
漢方薬 塗り薬による治療の補助として使われることがありますが、効果の根拠は限られています。まれに副作用もあるため、漢方薬に詳しい医師のもとで使用します。

子どものアトピー性皮膚炎の治療が大切な理由

アレルギー疾患が次々と発症していく状態を「アレルギーマーチ」と呼びます。アトピー性皮膚炎をもつ乳幼児は、食物アレルギーや気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを後に続けて発症しやすいと指摘されています。

この背景には、皮膚のバリア機能の低下があります。アトピー性皮膚炎では、皮膚の防御力が弱くなっているため、環境中に存在する様々なアレルゲンが皮膚を通じて体内に入り込み、アレルギー反応を引き起こすのです(この過程は経皮感作と呼ばれます)。

こうした経皮感作を防ぎ、将来的なアレルギー疾患の予防につなげるためにも、乳児期からの湿疹のケアやアトピー性皮膚炎の早期治療が重要です。

参考文献

  • アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
  1. 子どもの発達の凸凹と向き合う
  2. 乳幼児健診のきほん
  3. ロタウイルス胃腸炎